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うちの社員のAI活用は、いまどの段階か — 6つのレベルで測る

うちの社員のAI活用は、いまどの段階か — 6つのレベルで測る

「AIを使えている」の中身は、人によって違う

ChatGPTを全社に入れた。研修もやった。それでも、使っている人と使っていない人がはっきり分かれている——この状態の相談をよく受けます。

そして、もう一段やっかいなのが「使っているつもり」です。

毎日AIに質問している人がいる。本人も上司も「あの人はAIを使いこなしている」と思っている。ところが出てきた答えをそのまま資料に貼っていて、数字が合っていない。誰も確かめていない。

同じ「使っている」でも、中身がまったく違います。

この違いを言葉にできないまま研修を発注すると、受講者の半分には簡単すぎて、もう半分にはついていけないという結果になります。教える側が悪いわけではありません。誰に何を教えるかが決まっていないだけです。

だから、まず測る必要があります。

組織を測るモデルはある。個人を測る物差しが無かった

調べてみると、AI活用の成熟度を測るモデルは複数ありました。

日立製作所とGen-AXが共同開発したMA-ATRIXは、7つの評価軸それぞれについてレベル0から6までの7段階で評価します。日立が創出した1,000件を超える生成AI活用のユースケースをもとにしたもので、IPAが運営する「DX SQUARE」で解説されています。

レベルの名前を見ると、ソフトウェア開発の成熟度モデルと同じ進み方をしていることが分かります。不完全な、実施された、管理された、定義された、定量的に管理された、最適化している——そして最上位のレベル6は「AIによって自律的に最適化された」。改善の意思決定そのものをAIに委ね、人間が監督する状態です。

MA-ATRIXはクリエイティブ・コモンズで無償公開されていて、GitHubから資料を入手できます。

AWSも生成AIの成熟度モデルを公開していて、こちらは4レベル。ただしAWSは、組織やその生成AI機能を初心者・変革的とひとくくりに分類することを意図しておらず、導入の各側面を個別に検討する必要があるという立場を明記しています。

ただ、これらはすべて「組織」を測るものでした。

経済産業省とIPAが策定しているデジタルスキル標準(DSS)は個人向けですが、こちらは性格が違います。全ビジネスパーソンが身につけるべきスキルを定義した「DXリテラシー標準」と、DXを推進する人材の役割とスキルを定義した「DX推進スキル標準」の2つで構成されていて、レベルの進行モデルではありません。2026年4月にver.2.0が公開され、AIの進展を踏まえてデータマネジメント類型が新設されています。

つまり、組織の現在地を測る道具はあるのに、社員一人ひとりを測る道具が見当たらない

人事考課に使いたい、研修の対象を決めたい——という現場の必要に、既存のモデルは答えていませんでした。

そこで自社でつくりました。以下は、既存のモデルを参考にしつつ、当社が独自に組み立てたものです。公的な標準ではありません。

6つの段階に分けると、次の一手が決まる

軸は「AIの出力をどう扱うか」にしました。

組織向けのモデルは「活用範囲」や「業務への統合度」を軸にしていますが、個人を測るなら、その人が出てきた答えをどう扱うかが決定的だと考えたからです。

レベル0:触っていない
業務でAIを使っていません。アカウントが無いか、作ったけれど開いていない。次の一手は、失敗しても困らない業務を1つ決めて使わせることです。「何に使えるか」から入ると決まりません。

レベル1:使う
聞いて答えをもらい、ほぼそのまま使います。特徴は「AIがそう言っていたので」と説明すること。確かめた形跡がありません。

レベル2:確かめる
出力を検証する習慣があります。出典を確認する、別の方法で計算し直す。ただし確かめ方が自己流で、穴に気づけません。「何をどこまで確かめれば十分か」の基準がないからです。

レベル3:設計する
作業を始める前に、合格条件を決められます。指示に検証手順が入っていて、「一致すること」をどう測るかまで書いてある。条件を満たさなければ止める判断もできます。弱点は、その人の中に閉じていること。他の人が同じ品質を出せません。

レベル4:任せる
手順を渡し、返ってきた報告を読んで裁定できます。特徴は報告を疑うこと。「合格」と書いてあっても自分で確かめます。選択肢とトレードオフを比べて決められて、やらないという判断もできます。

この「使わないと決める」判断は、MA-ATRIXも評価の対象にしています。「とにかくAIを使うこと」ではなく、どこにAIを使い、どこにAIを使わないかを、根拠を持って決めているかという判断の質を見る、という考え方です。

レベル5:仕組みにする
検証手順と判断の根拠を、他人が使える形にしています。規格や手順書があり、実測にもとづいて更新されている。そして「なぜそう決めたか」が書いてある。採らなかった案とその理由まで残っていれば、次に読む人が同じ検討を繰り返しません。

当社の場合、AIを役割ごとに3つに分けて運用しているルールや、AIが書いたコードを別のAIに検証させた記録がこれにあたります。

2段目と3段目は、どこで見分けるのか

実際に使ってみて、判定が割れるのはここでした。

本人に聞くと、たいてい「確かめています」と答えます。嘘ではありません。実際に確かめている。

ただ、作業を始める前に合格条件を書いていなければ、それはレベル2です。

違いは順番です。レベル2は出てきたものを見てから確かめる。レベル3は始める前に「何が確認できたら完了か」を決めている。

この差は自己申告では出ません。だから判定するときは、指示や依頼の文面を見てください。検証手順が書いてあるか。何をもって合格とするかが決まっているか。

判定するときの原則を、4つにまとめています。

1つめ。1人に1つのレベルを付けない。業務によってレベルは違います。AWSのモデルも、導入の各側面を個別に検討すべきだとしていました。業務領域を3つから5つに分けて、それぞれで判定します。

2つめ。自己申告だけで判定しない。「できると思っているか」ではなく「やっているか」で見ます。

3つめ。飛び級させない。レベル1の人にレベル3を教えても定着しません。確かめる習慣がない人に「合格条件を先に書け」と言っても、何を確かめるべきかが分からないので条件が書けないからです。

4つめ。平均を取らない。いちばん遅れている領域から上げます。

段階ごとに教える内容も変わります。レベル1からレベル2へは「出力は間違う」という体験——本人の専門領域で質問させて、自分で誤りを見つけさせるのが最短です。レベル2からレベル3へは、合格条件の書き方。レベル3からレベル4へは、手順の渡し方と報告の読み方。

研修で届くのはレベル3までです。レベル4から先は、実際の業務のなかで伴走しないと身につきません。ここを正直に言わない研修は、期待を外します。

事故の数で測ると、挑戦しない人が高く出る

もう1つ、判定の原則があります。事故の発生数でレベルを判定しない。

これは自社で一度、判定を間違えて気づきました。

当社は2026年8月の3日間で、コーポレートサイトに27本の変更を入れました。実装はAIエージェント、判断は人間という体制です。サイト自体もAIで内製したもので、その延長にある運用です。そのあいだに記録が実態に追いつかない事故が5件起きています。

解決済みの課題が「未対応」として記録に残り、7日間にわたって扱われていた。一度決着した判断を、根拠が書かれていなかったために蒸し返した。実在しない作業を「まだ残っている」と認識し続けていた。

これを見て、最初は「レベル5には届いていない」と判定しました。間違いでした。

上の段に行くほど、扱う範囲が広がって事故は増えます。レベル1の人が失敗しないのは、確かめていないから気づいていないだけです。ミスの数で測ると、いちばん挑戦していない人が高く出ます。

見るべきは、事故に対して何をしたかです。

気づかなければレベル1。その場で直せばレベル2から3。原因を特定して直せばレベル3から4。そして原因を「型」として抽出し、再発防止を仕組みにできればレベル5です。

先の5件について、当社がやったのは後者でした。1件ずつ直すのではなく、共通する形を取り出しています。

たとえば「実在しない作業が残っていると認識され続けた」件からは、「〜のときにまとめてやる」と書いたら、その『〜』が起票されているかを必ず確認するという型を取り出しました。条件節は、条件側の作業が実在しなくても独立して生き残るからです。

「規格が守られていない項目が4件あった」件からは、規格の数値は実測から導く。守られていない項目を見つけたら、まず実態が間違っているのか規格が間違っているのかを判定するという型を取り出して、仕様書の冒頭に置きました。実際に4項目とも、規格の側が実態と合っていませんでした。

同じ事故でも、その後の行動でレベルが分かれます。

明日、できること

まず、1人だけ選んで判定してみてください。全社でやろうとすると始まりません。

見るのは3つです。

その人がAIに出した指示の文面。検証手順が書いてありますか。出てきた答えの扱い。そのまま使っていますか、確かめていますか。そして確かめる順番。始める前に条件を決めていますか、出てきてから見ていますか。

この3つで、レベル1・2・3のどれかは判定できます。企業のスタッフの大半はこの範囲にいます。

判定できたら、次の一手は自動的に決まります。レベル1なら「間違う体験」。レベル2なら「合格条件を先に書く」。レベル3なら「手順を人に渡してみる」。

1つ、やらないほうがいいこともあります。いきなり全社研修を発注しないでください。レベルがばらついたまま同じ内容を教えると、半分には簡単すぎて、もう半分にはついていけません。

自社の現在地を整理するところから始めたい場合は、AI顧問・AI人材育成のご相談からお声がけください。業務の棚卸しと、AI活用の現在地の整理からお手伝いします。

参考

本記事で示した6段階は、上記を参考にLFUが独自に策定したものであり、公的な標準ではありません。各モデルは改訂されることがあるため、引用の際は最新版をご確認ください。

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