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看護師の応募が来ない本当の理由 — 求人を出して採用に至るのは5.3%

看護師の応募が来ない本当の理由 — 求人を出して採用に至るのは5.3%

「応募が来ないんです」と相談を受けたとき、当社がまずお願いするのは、求人票を見せてもらうことです。そこで目につくのは、たいてい同じ2つでした。

ひとつは、強みの言葉がありきたりなこと。「アットホームな職場」「風通しの良い環境」「スキルアップできます」。どこの事業所でも言える言葉が並んでいます。もうひとつは、給与がそのエリアの相場を下回っていること。近隣を調べずに設定しているので、本人たちは低いことに気づいていません。

この2つを直せば、応募は増えます。ただ、それで採用できるかというと、話は別です。

ナースセンターの求人では、採用に至るのは5.3%

日本看護協会が2024年度のナースセンター登録データを分析した結果によると、求人施設側から見た応募率は10.7%、実際に採用まで至った割合は5.3%でした。都道府県ナースセンターに出された17万件あまりの求人のうち、応募が来たのが1割、採用に結びついたのが5%という数字です。

これは無料職業紹介であるナースセンターに限った数字なので、有料の人材紹介や自社サイトからの応募まで含めれば、実態はもう少し違ってきます。ただ、求人を出しさえすれば人が来る、という状態からは程遠いことは、この数字が示しています。

求人倍率も上がり続けています。2024年度は2.51倍で、10年ぶりの高水準でした。施設種類別では訪問看護ステーションが4.54倍で最も高く、20〜199床の病院が3.00倍と続きます。当社も東京都内で訪問看護ステーションを運営しているので、この4.54倍が現場で何を意味するかは身をもって知っています。

つまり「求人票を出せば採用できる」という前提が、すでに成立していません。多くの経営者がここでつまずいています。

給与は「決め手」ではなく「足切り」

同じ調査に、もうひとつ興味深い数字があります。求職の段階で重視する条件を聞くと、「勤務時間」が22.6%で最も高く、「給与」が18.1%で続きます。ところが、実際に就職を決めた人が重視していた条件を見ると、「通勤時間」(14.9%)が「給与」(14.7%)をわずかに上回るのです。

差は0.2ポイントなので、統計的に大きな差だと言い切るつもりはありません。ただ、探しているときは給与が2位に来るのに、決めたときには給与が3位に落ちる。この順位の入れ替わりには、意味があると考えています。

当社が取材してきた医療職の方々も、同じことを言います。自分の時間を大切にしている人が多く、給与は一定の水準をもらえればよくて、そこから先はアフターファイブや朝の時間を有効に使えるかどうかが判断の軸になっていく。

ここで、当社の失敗談をひとつ。ある事業所で、どうしても採りたい看護師さんがいて、給与交渉をして相場よりかなり高い額を提示したことがあります。結果は不採用ではなく、辞退でした。その方が選んだのは、当社が提示した額より安い職場です。理由は、職場の雰囲気と、面接で会った人の印象でした。

このとき腹に落ちたのが、給与の位置づけです。相場を下回れば、そもそも検討の土俵に上がれない。だから相場を調べるのは必須です。しかし相場を超えたところから先は、いくら積んでも決定打にはならない。給与は足切りのラインであって、選ばれる理由ではないということです。

もちろん例外はあります。生活が逼迫していて条件を優先する方もいますし、専門性が高く市場価値が明確な方は、条件で動くこともある。ただ、当社が見てきた範囲では、それは多数派ではありませんでした。

面接で落としているのは、応募者ではなく事業所のほうかもしれない

キャリア相談の場では、面接では絶対に出てこない本音が出てきます。「あの職場を選ばなかった理由」として実際に聞くのは、こういうものです。

面接官が業務的だった。自分たちの事業所について、何も話してくれなかった。第一印象や、事業所全体の雰囲気が気になった。

経営者からすると意外かもしれませんが、応募者は面接の場で条件を確認しているのではありません。そこで働いている自分を想像しているのです。面接官の話し方や表情から、「この人が上司なのか」「この空気の中で毎日過ごすのか」を読み取っている。だから、質問に淡々と答えるだけの面接は、それだけで減点になります。

採用が難しい時代の面接は、選考ではなく口説き合いです。事業所側も選ばれている、という自覚があるかどうかで、結果が変わります。

4.54倍の世界で、応募8名から5名を採用した話

当社が運営する訪問看護ステーションは、先ほどの数字でいえば最も採用の難しい区分にあります。直近1年の実績は、応募8名に対して、看護師3名・理学療法士2名(うち1名は非常勤)の計5名を採用しました。

応募8名は、多い数字ではありません。母集団形成という観点では、むしろ少ないほうです。ただ、応募した人のうち採用に至った割合は62.5%になります。同じ調査における全体の応募就職率は49.2%なので、それを上回りました。1ステーションの数字なので母数が小さいことは断っておきますが、傾向としては見るに値すると考えています。

何が起きているのか。応募が来る前に、絞り込みがすでに終わっているのです。

当社は母体として、挑戦心のある医療職のコミュニティを運営しています。「あのコミュニティが一緒に運営しているステーション」という認識が先にあるので、求人票を見る前に、どんな場所で、誰がいて、何を大事にしているかが伝わっている。だから、合わない人はそもそも応募してきません。

もうひとつは、人です。役員2名の人柄を採用の中心に置いていて、どう伝えるか、どう協力するかを細かく共有しています。応募者が見ているのが「人」である以上、そこに一番手をかけるのが合理的だからです。

派手な打ち手ではありません。ただ、求人倍率4.54倍という数字は、条件の勝負で大手に勝てないことを意味します。勝負する場所を変えるしかない。母集団を大きくして、その中から選ぶのではない。合う人しか来ない状態を先につくる。 応募8名で5名を採用できているのは、その結果です。

採用の前に、「採らない人」を決める

最後に、当社が採用支援の現場で最も強く感じている誤解を書きます。

多くの経営者は、採用を「人を増やすこと」だと考えています。しかし実際には、採用より、辞めさせないことのほうが重要です。採っては辞め、採っては辞めを繰り返している事業所は、採用の問題ではなく、組織の問題を抱えています。穴の空いたバケツに水を注いでも、水位は上がりません。

そして採用のときに決めるべきなのは、「採りたい人」だけではありません。「採ってはいけない人」を決めて、その人を採らないことです。欠員が出て焦っているときほど、この線が甘くなります。そして甘くした結果として入った一人が、既存のスタッフを辞めさせていく。

採用の巧拙は、求人票の書き方ではなく、この線引きの厳しさに表れます。

明日、できること

求人票を印刷して、近隣の同規模の事業所3つの求人票と、並べて置いてみてください。

自分たちの強みとして書いた言葉が、他の3枚にも書いてあったら、それは強みではありません。給与が3枚より低ければ、応募が来ない理由はそこにあります。そして、その3枚のどれとも違うことが1行も書けないなら、直すべきなのは求人票ではなく、事業所のほうです。

当社は、採用の支援と、その先の組織づくりの両方を扱っています。どちらか片方だけでは、この問題は解けないからです。

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