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人材紹介に100万円払う前に。中小企業が採用を「外注」してはいけない理由

人材紹介に100万円払う前に。中小企業が採用を「外注」してはいけない理由

医療職を1人採用すると、人材紹介会社に成果報酬として約100万円が動きます。

中小企業にとって、これは馬鹿にならない金額です。そして、もっと怖いことがあります。払い続けても、自社の採用力は一向に育たないということです。

先に立場を明かします。当社自身が、人材紹介業(有料職業紹介事業)を営んでいます。そのうえで書きます。多くの中小企業は、人材紹介に「依存」すべきではありません。

なぜ、依存してしまうのか

責める話ではありません。依存には、はっきりした理由があります。

まず、創業者本人がリファラル採用(社員の紹介による採用)に力を入れていない。だから社内でもリファラルが起きない。かといって、街を歩いていて良い人材に出会えるわけもなく、ましてや医療職となると、出会う場所そのものがありません。

出会いたくても、日々の業務が忙しい。そうなると、どうしてもインターネットに頼ることになります。大手の採用サイトに掲載する——それが今の主流です。そして最終的に、人材紹介会社に依存する流れができあがります。

これは感覚の話ではありません。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年3月・全国計)を見ると、全職業の有効求人倍率が1.10倍なのに対し、保健師・助産師・看護師は2.12倍、介護サービス職業従事者は3.63倍です。介護に至っては、全職業の3倍を超えています。

求人1件あたりの求職者が、そもそも足りていない。出会う場所がないのは、経営者の努力不足ではなく、市場がそうなっているからです。

一つひとつは、合理的な判断です。忙しい経営者が、目の前の欠員を埋めるために紹介会社を使う。何も間違っていません。問題は、それが「一度きり」で終わらないことです。

紹介会社に頼るということは、採用を外注しているのと同じです。

外注している限り、社内に採用のノウハウは蓄積されません。次に欠員が出たとき、自社では採れない。だからまた紹介を通す。採用力がないから紹介に頼り、紹介に頼るから採用力が育たない。この輪から抜けられなくなります。

そして、そのたびに約100万円が出ていきます。

結果どうなるか。利益が薄くなる。採用費が嵩む。そして最悪の場合、予算がなければ採用できず、人が足りないまま事業が回らなくなる。採用コストが、経営そのものを圧迫し始めます。これは、決して大げさな話ではありません。

この構造は、数字にも出ています。介護労働安定センターの令和7年度・介護労働実態調査によると、有料職業紹介を採用手段として使っている事業所は37.9%。約4割です。

ところが同じ調査の令和6年度版で、実際に働いている人に「いまの法人に就職したきっかけ」を聞くと、民間の職業紹介は3.4%しかありません。

4割の事業所が使っているのに、そこから入った人は30人に1人。使っている事業所の数に対して、採れている人の数が圧倒的に少ない。紹介は「たくさん採る手段」ではないということです。それでも、1人決まれば100万円が動きます。

ただし、紹介を使うべき場面もあります

紹介業をやっている人間として、正直に線を引きます。紹介会社を使うべき場面は、確かにあります。

たとえば訪問看護には、人員基準があります。看護師の退職で基準を割ってしまえば、事業所そのものが閉鎖に追い込まれます。こういうとき——緊急度が高く、待っている余裕がないときは、紹介に頼るべきです。100万円を払ってでも、事業を止めないほうがいい。

線引きはシンプルです。緊急時は使う。通常の採用活動では使わない。

実際、先ほどの介護労働実態調査では、有料職業紹介を使った事業所のうち53.4%が「効果があった」と答えています。これは調査に挙がった採用手段の中で最も高い数字です。

効かないわけではありません。効くけれど、量は稼げず、1人あたりが高い。だから使いどころを絞る、という話です。

平常時の採用まで紹介に丸投げしていると、さっきの輪から永遠に抜けられません。通常の採用は、紹介を挟まず、自社で採用ブランディングを積み上げていく。これが、中長期で見れば最も効果的です。

緊急時に紹介を使うとき、良い会社と悪い会社の見分け方を書いておきます。

良い紹介会社は、最初から「求職者と求人のビジョンがマッチすること」を意識しています。闇雲に人を紹介せず、利益優先で動かない。「この人は、御社のこういうポジションで、こう役に立つと思います」と、明確に提示してくれる。

そして、レスポンスの速さ。これも良い会社を見分ける大きなポイントです。

逆に、とにかく人数を送り込んでくるだけ、なぜその人なのかを説明できない、返信が遅い——そういう紹介会社は、避けたほうがいい。

その100万円を、どこに使うか

ここが、この記事でいちばん伝えたいことです。

人材紹介に100万円を渡すより、その予算を自社に投下したほうがいい。

今いる事業メンバーや本部に予算をつけて、ホームページを採用向けに一新する。SNSで効果的に発信する。紹介会社に一度払えば消える100万円と、自社の採用力として残る100万円。同じ金額でも、残るものがまったく違います。

では、自社に投じると何が残るのか。3つに分けます。

  1. 採用向けのホームページ。求人票には書けない分量を置ける場所ができます。どんな人が働いていて、1日がどう流れて、何が大変で、何が面白いのか。一度つくれば、24時間、応募を検討している人に説明し続けます。
  2. SNSでの発信。応募前に職場を見た状態の人が来ます。入ってから「思っていたのと違う」が減るので、採用だけでなく定着にも効きます。
  3. リファラルが起きる状態。これは制度というより、スタッフが「うちに来なよ」と言える職場かどうかの話です。次の節で書きます。

ここで、正直に数字を出しておきます。同じ介護労働実態調査で、事業所ホームページで自事業所のアピールを発信している事業所は36.8%、SNSは16.3%。どちらも過半に届いていません。そして「効果があった」と答えた割合は、ホームページ24.4%、SNS27.6%。先ほどの有料職業紹介53.4%より、低いのです。

それでも自社に投じるべきだと考えるのは、紹介は毎回100万円が要るのに対して、ホームページとSNSは積み上がるからです。1年目の効果は低い。3年目に効いてきます。そしてまだ多数派がやっていないということは、やった事業所が目立つということでもあります。

外に払えば、その場の欠員は埋まる。でも、何も残らない。自社に投資すれば、時間はかかるが、二度目からは紹介に頼らず採れる体になっていきます。

最も効率がいいのは、リファラル採用

では、自社で採るために、具体的に何をするか。

中長期で最も効率がいい採用手段は、リファラル採用です。社員が「うちに来なよ」と、自分の知り合いを連れてくる。紹介フィーはかからず、しかも社員が保証している人材なので、ミスマッチも起きにくい。

これも、実感だけの話ではありません。介護労働実態調査の令和7年度版で「いまの法人に就職したきっかけ」を聞くと、友人・知人からの紹介が33.8%で1位。勤続1年未満に絞っても29.3%で1位です。事業所側から見ても、職員に紹介を依頼している事業所は66.0%と最も多く、効果があったと答えた割合も47.3%。

入職経路としても、採用手段としても、実績が一番あるのがリファラルです。それでいて、外に払うお金はかかりません。

ただ、リファラルは待っていても起きません。社員が思わず「うちは良い会社だ」と周りに話したくなる状態を作らないと、紹介は生まれない。

そのためにやることは、地味です。まず、社員が自社を好きになる必要があります。職場環境を整え、働きやすさを本気で作る。そして、役員自身が「この人と一緒に働きたい」と思える人格者であること。当社では、役員に対して、一緒に働きたいと思える人になれるよう、常に自分を見直すようにと伝えています。

採用ブランディングというと、外向きの発信の話だと思われがちです。でも本質は逆で、中の環境が整っていなければ、外にどれだけ発信しても人は来ません。待っていても、良い人は来ないのです。だからこそ、中を整えたうえで、対外的な活動や外部との連携も、積極的に行う必要があります。

「何から手をつければいいか分からない」経営者へ

自社採用に切り替えたいが、何から始めればいいか分からない。そういう経営者に、最初の一歩をお伝えします。

まず、ホームページとSNSを確認してください。求職者が必ず見る場所です。それが、採用したい人に向けたものになっているか。会社の雰囲気、働く人の顔、なぜこの職場を選ぶべきなのか——それが伝わる作りになっているか。多くの場合、なっていません。

見るポイントは3つです。求人ページに、給与と勤務時間以外のことが書いてあるか。実際に働いている人の顔と言葉が載っているか。最終更新がいつか。この3つが揃っていない求人ページは、応募を検討している人にとって「情報がない」のと同じです。

先ほどの数字のとおり、ここができている事業所は多数派ではありません。だから、直せば差がつきます。

次に、リファラル採用に向けて、社内環境を整備する。社員が思わず自慢したくなる会社にする。この2つが、最初の一歩です。

明日、できること

最後に、明日できることをひとつ。直近3年間で払った紹介手数料の合計を出してみてください。何人採用して、いくら払ったか。それだけです。

出てきた金額を見て、「この金額を最初から自社に投じていたら、いま何が残っていただろうか」と考えてみてください。ホームページは作り直せたはずです。発信も続けられたはずです。それでも紹介に頼らざるを得なかったのなら、それは正しい判断でした。そうでないなら、来年からの使い道を変える余地があります。

人材紹介は、緊急時の頼れる手段です。当社もその役割を担っています。でも、通常の採用まで依存してしまうと、採用力は育たず、100万円が出ていき続けます。

その100万円を、外に払い続けるのか。自社の採用力に投資するのか。この選択が、数年後の経営を大きく変えます。

当社は、医療・介護の事業者向けに採用の支援組織づくりの支援を行っています。紹介して終わり、ではなく、自社で採れる体になるところまでを一緒に考えます。

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