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同じ内容なのに伝わらないのは、誰がいつ言うかで結果が変わるからです

同じ内容なのに伝わらないのは、誰がいつ言うかで結果が変わるからです

正しいことを言えば伝わる、わけではない

指摘の内容は間違っていない。言い方もきつくない。それなのに、相手の表情が変わって、そこから会話が進まなくなる。

一方で、まったく同じことを別の人が言ったら、あっさり受け入れられる。「そうですね、直します」で終わる。

この違いは、内容の問題ではありません。同じ言葉が、条件によって届いたり届かなかったりするというだけのことです。

管理者としては、納得しづらいところだと思います。正しいことを、適切な言葉で伝えている。それで伝わらないなら、受け手の問題ではないか——そう考えたくなる。

けれど、受け取り方が人によって違うのは、未熟だからではありません。人は情報だけを受け取っているのではなく、「誰が」「どんな状況で」言ったかも一緒に受け取っています。それが普通の反応です。

だとすれば、管理者の側でできることがあります。内容を磨くだけでなく、条件のほうを整える。ここを意識しているかどうかで、同じ人が同じことを言っても結果が変わります。

内容より先に、関係が効いている

いちばん大きいのは、その人との信頼が先にあるかどうかです。

日頃からよく話している相手からの指摘は、すっと入ります。「自分のことを見てくれている人が言っている」という前提があるからです。一方、普段ほとんど関わりのない管理者から同じことを言われると、内容の前に「なぜこの人が」が来ます。

これは相手が頑固なのではありません。普段見ていない人の評価は、精度が低いと考えるのが自然だからです。実際、たまたま見えた一場面だけで判断されることは起こります。警戒は、合理的な反応です。

だから信頼は、指摘の場面で作れません。日々のやり取りの積み重ねが、そのときに効いてくる。フィードバックの効果は、面談の前に半分決まっていると考えたほうが実態に合っています。

では何を積み重ねるのか。大きなことではありません。名前を呼ぶ、変化に気づいて声をかける、頼まれごとに返事をする。この程度のことが、「見てくれている人」という認識を作ります。

逆に言うと、面談のときだけ丁寧に話しても効きません。普段は目も合わないのに、面談だけ「最近どう?」と聞かれる。その落差自体が、警戒の材料になります。

医療・介護では、ここに構造的な難しさが加わります。シフトが違えば、そもそも会う回数が少ない。夜勤中心のスタッフとは、月に数回しか顔を合わせないこともあります。多職種であればなおさらで、他職種の管理者が指摘する場面では、日常の接点がほとんどないところから始まる。

この場合、接点の少なさを自覚しているかどうかで違います。「自分は普段見ていない」という前提に立てば、まず状況を聞くところから入れる。見ているつもりで入ると、そこでずれます。

そして、この違いを認めることには実務的な意味があります。自分が言うより、別の人から言ってもらったほうが早い場面がある。プリセプターから、同じ職種の先輩から、あるいは他部署の管理者から。内容が同じなら、いちばん届く人が言えばいい。

ただし、これを言いにくいことの回避に使うのは違います。評価や処遇に関わる話、本人の責任に関わる話は、立場のある人が自分で伝えるべきです。「届きやすさ」で選ぶのと、「気まずさ」から逃げるのは別物です。

タイミングを外すと、正しいことも届かない

もうひとつは、いつ言うかです。

ミスの直後は、本人がいちばん動揺しています。そこに指摘を重ねると、内容が入る余地はありません。守りに入るのは当然で、そこで得られるのは「反省の言葉」だけです。行動は変わりません。

逆に、時間が経ちすぎるのも良くない。「なぜ今さら」になります。本人の中では終わったことなので、蒸し返されたと受け取られる。

そして場所も条件のうちです。他のスタッフがいる場で指摘されると、内容より恥のほうが記憶に残ります。本人は指摘の中身ではなく、見られていたことを覚えている。

医療・介護の職場では、ここが難しいところです。申し送りや処置の合間しか、話す機会がない。落ち着いて話せる時間を取ろうとすると、面談の日まで持ち越すことになる。タイミングを外すか、場所を外すかという選択になりがちです。

完璧な条件はほとんど揃いません。それでも、「今は言わない」という判断も選択肢に入れておくだけで、結果は変わると思います。

そしてもう1つ、見落とされやすいことがあります。同じ条件は、良いことを伝えるときにも効いています。

指摘は「言わなければ」と思うので、多少条件が悪くても伝えられます。ところが承認は、後回しにされる。「あとで言おう」と思っているうちに、機会が流れる。そして伝えそびれた承認は、記録にも残りません。

本人からすると、指摘だけが届いて、評価は届いていない状態になります。実際には認めているのに、伝わっていない。「見てもらえていない」という感覚は、こうして生まれることが多いと思います。

過去を指摘するか、未来を一緒に考えるか

伝え方そのものにも、選択肢があります。

一般にフィードバックと呼ばれるのは、すでに起きたことへの評価です。「なぜあのとき、ああしたのか」「あの対応は良くなかった」。過去に起きたことを扱います。

これに対してフィードフォワードは、これから起きることへの提案です。「次に同じ場面が来たら、どうするか」「こういう場合は、こう動けるといい」。

内容としては、ほとんど同じことを言っています。けれど時制が違うだけで、受け取られ方が変わります。

過去を問われると、人は説明を求められていると感じます。だから理由を探し、正当化しようとする。話が「なぜそうしたか」の説明合戦になる。一方、未来を問われると、一緒に考える形になります。責任の所在を確定させる作業ではなくなるからです。

言い換えの例を挙げます。「なぜ報告が遅れたのか」は、「次に同じことが起きたら、どの時点で一報がほしいか決めておこう」に変えられます。「あの対応は良くなかった」は、「次にご家族から同じ質問が来たら、どう答えるのがいいと思う?」に変えられる。指摘したい中身は、まったく同じです。

とくに、同じ指摘を何度もしている相手には効きます。過去の話は回数を重ねるほど重くなりますが、未来の話は毎回リセットできる。「また同じことを言われた」ではなく「次はこうしよう」で終われるのは、続ける側にとっても楽です。

それでも、事実確認を飛ばしてはいけない場面があります

ただし、フィードフォワードに寄せすぎるのは危険です。

医療・介護の現場には、何が起きたかを確定させなければならない場面があります。インシデント、事故、患者さんに影響が出た事象。ここで「次はどうする?」から始めると、原因が特定されないまま、気持ちだけ前向きになります。

再発を防ぐには、まず事実が要ります。何が、いつ、どういう手順の中で起きたのか。それを飛ばした改善策は、たいてい的を外します。

だから、使い分けです。事実の確認が必要な場面はフィードバック、行動の改善を促す場面はフィードフォワード。この2つを混ぜないことが実務では大事だと思っています。

そして事実確認をするときも、人ではなく事象を扱うと決めておくと違います。「なぜあなたはそうしたのか」ではなく「そのとき何が起きていたのか」。同じ情報を集めながら、責任追及にならない。この違いは、次に報告が上がってくるかどうかを左右します。

明日、できること

大がかりなことは要りません。

明日できることは、たった1つです。次に何かを指摘しようと思ったとき、口を開く前に一度だけ考えてください。「これは、いま、自分が言うのがいちばん届くだろうか」。

答えが「いいえ」なら、あとにするか、別の人に頼む。それだけで、伝わらない指摘をひとつ減らせます。

ただし、「今は言わない」を選び続けると、何も言えなくなります。条件が完璧に揃う日は来ないので、どこかで踏み切る必要がある。目安としては、同じことが2回起きたら、条件が多少悪くても伝えるくらいでちょうどいいと思います。3回目まで待つと、本人にとっては「ずっと黙って見られていた」ことになります。

そしてもう1つ。同じ相手に同じことを2回以上言っている場合は、時制を変えてみてください。「なぜできないのか」ではなく「次はどうすればできそうか」。内容は変えなくていい。言い方を変えるだけです。

承認のほうも、1つ決めておくと続きます。「気づいたことは、その日のうちに言う」でも「面談で必ず1つは良かったことから話す」でも構いません。後回しにすると流れるので、いつ言うかを先に決めておくほうが確実です。

ここで気をつけたいのは、伝わらなかったのは相手のせいだと考えないことです。条件を整えるのは、伝える側にできる仕事ですし、条件を変えれば結果が変わるということは、打つ手があるということでもあります。そして条件が整っていない状態が続くと、何が評価されているのか分からないという状態にもつながります。指摘が届いていないということは、基準も届いていないということだからです。

そうした積み重ねは、辞める理由としては表に出てきません。離職の本当の理由が見えにくいのは、こういう小さなすれ違いが記録に残らないからでもあります。

もし、管理者が迷わずに伝えられる形を一緒に考えたい場合は、管理職育成のご相談からお声がけください。

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