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求める人物像は、いまのチームから逆算して決める

求める人物像は、いまのチームから逆算して決める

「良い人がいたら」で止まっていないか

欠員が出たので、同じ職種を1人採る。多くの現場で、採用はこの形で始まります。

そして求める人物像を聞くと、たいていこう返ってきます。「まあ、良い人ならいいんですけど」。

これは投げやりな答えではありません。本当に、良い人が来てくれれば助かるからです。人手が足りない状況で、細かい条件を付けている場合ではない。気持ちとしては当然だと思います。

ただ、この状態で採用を進めると選ぶ基準がありません。面接をしても、何を見ればいいのか決まっていない。結果として、話しやすかった人、印象の良かった人が選ばれます。

そして入職後に、こうなります。「思っていたのと違った」。何を思っていたのかが言葉になっていなかったのだから、違って当然です。

もうひとつ困るのは、面接官が複数いる場合です。院長と看護部長で評価が割れる。基準が共有されていないので、どちらの直感が正しいかという話になってしまう。決着のつけようがありません。

このとき起きているのは、「良い人」の中身が人によって違うということです。

院長にとっての良い人は、指示を汲んで自分で動ける人かもしれない。看護部長にとっての良い人は、分からないことを必ず確認する人かもしれない。両方とも正しいのですが、同じ人が両方を満たすとは限りません。むしろ逆方向に見えることもある。

そして、この違いは採用のときに初めて表に出ます。普段は「良い人がほしい」で一致しているように見えるので、ずれていることに気づかない。面接で意見が割れて、はじめて別のものを見ていたと分かるわけです。

求める人物像が、どの院でも同じ言葉になる

では基準を作ろう、となったときに次の問題が起きます。

書き出してみると、どこの医療機関でも同じ言葉が並ぶのです。明るい人。協調性がある人。責任感のある人。向上心のある人。間違ってはいませんが、これで選べるでしょうか。

問題は2つあります。

1つは、反対がないこと。「暗くて協調性がなくて無責任な人を採りたい」という組織はありません。全員が同じことを言う基準は、基準として働きません。

もう1つは、応募者側から見ても同じであること。求人票を5件並べて、全部に「明るく協調性のある方」と書いてある。選ぶ材料になりません。そして、自分が当てはまるかどうかも判断できない。

つまりこの人物像は、選考にも訴求にも効いていない。書いてあるけれど、機能していない状態です。

医療・介護には、これが放置されやすい事情もあります。資格要件がはっきりしているからです。

看護師なら正看か准看か、経験年数は何年か。この条件だけで、応募者はかなり絞られます。要件を書いた時点で、選考の枠組みができたように見える。だから人物像の欄は、最後に埋める飾りのようになりがちです。

けれど、資格が同じでも働き方はまったく違います。同じ看護師10年でも、急性期でチームで動いてきた人と、在宅で1人で判断してきた人では、得意なことが別です。資格で絞れるのは、ここまでできるという範囲だけ。どう働くかは、資格の外にあります。

業務の形が決まれば、必要な人は決まる

では、どうやって決めるのか。いまの業務の形から逆算します。

例を挙げます。当社が採用支援に入っている、ある在宅クリニックの話です。訪問診療をしていて、医師・看護師・医療事務の3人1組で回っています。

このクリニックが挙げた求める人物像の最重要項目は、「報連相がしっかりしていること」でした。明るさでも協調性でもありません。

理由は業務の形にあります。3人で1人の患者さんを見るので、情報が途切れた瞬間に事故になる。移動中の会話、訪問先での判断、戻ってからの記録。どこか1箇所で伝達が抜けると、次の訪問に影響します。

だから報連相が最重要になる。これは一般論ではなく、この業務の形から出てきた基準です。そして基準がこの粒度まで来ていれば、面接で何を見ればいいかも決まります。過去の職場でどう報告していたか、判断に迷ったときに誰に相談したか。具体的に聞けます。

同じことは、どの現場でもできます。夜勤帯にひとりで判断する場面が多いなら、自分で決められることが最重要になる。多職種で動くなら、他職種の言い分を聞けることが効く。日勤帯に常に複数人がいるなら、報連相の比重は相対的に下がります。

棚卸しの仕方は、難しくありません。「1人で判断する場面がどれくらいあるか」「誰と組んで動くか」「判断に迷ったとき、すぐ聞ける人が近くにいるか」。この3つを書き出すだけで、必要な力はかなり絞れます。

そして現場の人に聞くのがいちばん早いと思います。「この仕事で、いちばん困るのはどういう人か」。管理者が考えるより、一緒に働く人のほうが具体的に答えます。

業務の形が違えば、必要な人も違う。当たり前のようですが、求人票がそれを反映していることは多くありません。

いまのチームに、何が足りないか

もうひとつの視点があります。業務の形だけでなく、いまいる人たちを見る。

同じ業務でも、チームの構成によって足りないものは変わります。慎重に確認しながら進める人ばかりのチームなら、動ける人が要る。動きの速い人ばかりなら、後ろで拾える人が要る。

ここを見ずに採用すると、偏りが強まります。採用の判断はどうしても「自分たちと似た人」に寄るので、放っておくと同じタイプが増えていく。面接で話が合う人ほど、いま多いタイプである可能性が高いわけです。

チームの偏りは、個人を見ていても分かりません。並べて初めて見えます。適性検査をチームの理解に使うと、この部分がはっきりします。「うちには、こういう役割の人がいない」という形で見えれば、採用で埋めるべきものも決まる。

そして注意したいのは、足りない部分は「弱み」ではないということです。慎重さも速さも長所で、偏っていることだけが問題です。だから「今のメンバーが良くない」という話には一切なりません。

具体化すると、求人票も面接も変わる

人物像がこの粒度まで来ると、その先が全部変わります。

求人票の書き方が変わります。「明るく協調性のある方」ではなく、「3人1組で訪問するため、こまめな報告・連絡・相談ができる方」。読んだ人が、自分に当てはまるかを判断できます。そして当てはまらない人は応募してきません。母集団は減りますが、噛み合う確率は上がります。

面接で聞くことが変わります。人柄を見るのではなく、その要素を過去にどう発揮してきたかを聞ける。「報告のタイミングで悩んだことはありますか」「判断に迷ったとき、誰にどう相談していましたか」。答えの中身で判断できるようになります。

面接官が複数いても揃います。基準が言葉になっているので、印象の違いを持ち寄るのではなく、同じ物差しで話せる。評価が割れたときも、どこで割れたかが分かります。

そして入職後のミスマッチが減ります。期待していることを採用の段階で伝えているので、入ってから「そんなことは聞いていない」が起きにくい。求人に書いていないことを、後から求めないというだけのことです。

ここで「絞ると応募が減るのでは」という懸念が出ます。そのとおり、減ります。

ただ、減るのはもともと合わなかった応募です。面接をして、断って、また募集する。その工数と、断られた側の落胆を考えると、入口で分かるほうがお互いに良いと思います。

そして実際のところ、具体的なほうが刺さる人には強く刺さります。「こまめに報告できる方」と書かれていれば、それを得意としてきた人は「自分のことだ」と思う。全員に少しずつ届く求人票より、届く人に強く届く求人票のほうが、応募につながるというのが実感です。

なお、応募が来ないという段階でつまずいている場合は、求人票の内容以前の問題が起きていることもあります。そちらも合わせて見てみてください。

明日、できること

大がかりな採用計画から始める必要はありません。

明日できることは、たった1つです。いまの求人票を開いて、「求める人物像」の欄を読んでください。

そして、こう自問してみてください。「これ、他の医療機関の求人票に書いてあっても違和感がないか」。

違和感がないなら、その人物像は機能していません。自院にしか当てはまらない言葉に、1つだけ書き換えてみてください。全部を直す必要はありません。1つで十分です。

書き換えた1行が、面接で聞くこと・入職後に期待することの起点になります。ここが決まっていないまま採用を進めるより、1行あるだけで、判断がぶれにくくなると思います。

書き換えるときの手がかりは、業務の形です。誰と、何人で、どういう順番で仕事をしているか。そこに必要な力が、求める人物像になります。「訪問は2人1組です」「夜勤は1人です」——この事実を書くだけでも、求人票は具体になります。

もう1つ余裕があれば、面接で必ず聞く質問を1つ決めてください。その人物像を過去にどう発揮したかを聞く質問です。全員に同じことを聞くと、比べられるようになります。

そして、人物像は一度決めたら終わりではありません。チームの構成が変われば、足りないものも変わります。1人採ったら、次に必要な人は別のタイプかもしれない。採用のたびに見直すくらいでちょうどいいと思います。

もし、求める人物像の言語化や、その先の採用設計を一緒に考えたい場合は、採用・人材支援のご相談からお声がけください。

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