紹介手数料は、本当に高いのか — 中身を、もらう側が開示します

「紹介手数料って、正直、高くないですか」。採用のご相談の場で、こう聞かれることがあります。
当社は医療・介護・福祉に特化した人材紹介事業を営んでいます。つまり、その手数料をいただく側です。最初に、立場をはっきりさせておきます。当社は、この手数料を妥当な水準だと考えています。自分たちで妥当だと思えない値付けを、お客様に請求すべきではないからです。
ただ同時に、「高い」と感じられる理由も、よくわかります。看護師さん1人の入職で、動くお金は100万円前後。金額として大きいうえに、その中身が、外からはほとんど見えないからです。中身が見えないまま「妥当です」とだけ言われても、納得のしようがありません。
だからこの記事では、手数料が何でできているのかを開示します。そのうえで、もうひとつ大事な話をします。価格として妥当なサービスでも、使う場面を間違えれば、高い買い物になるということです。紹介への依存が続くことの危うさは別の記事に書きました。今回はその手前にある、中身と使いどころの話です。
相場は理論年収の20〜35% — まず金額の実態から
医療・介護・福祉の人材紹介では、手数料は理論年収の20〜35%程度が一般的な水準です。理論年収とは、月給の12ヶ月分に賞与などの想定額を加えた金額のこと。
年収450万円の看護師さんなら、手数料はおおよそ90万円から150万円台になります。1人の入職に対して、車が1台買える金額が動く。大きな金額であることは、いただく側も率直にそう思います。
多くの紹介会社には、入職後すぐに離職した場合の返金規定もあります。一般的には、入職から1ヶ月以内なら大部分を返金、3ヶ月以内なら半分程度、6ヶ月を過ぎるとほぼ返金なし、という段階設計です(割合は会社によって差があります)。つまり半年勤めて辞めた場合、手数料はほぼ満額支払ったままになる。この構造は、後半の「使いどころ」の話に深く関わってきます。
手数料は何でできているのか
金額の内訳にあたる構造は、大きく3つあります。
- 成約しなかった案件のコストを、成約した1件が背負う。職業紹介では原則として、求職者側からお金をいただきません。キャリア面談、求人のご紹介、条件の調整、見学の設定——この仕事の大半は、入職に至らずに終わります。至らなかった分の人件費は、成約した企業への請求で回収するしかありません。成功報酬という仕組みの宿命です。
- 転職を考えている人と出会うこと自体のコスト。広告、求人媒体、スカウト。医療職の有効求人倍率が高止まりしている今、転職検討層との接点は取り合いになっていて、この獲得コストは上がり続けています。
- 早期離職の返金リスクの引き当て。早期離職が起きれば、紹介会社は返金します。その分をあらかじめ見込んでおかなければ、事業として成り立ちません。
この3つが、当社が「妥当」と考える根拠です。原価の構造から見て、大きく下げる余地のある価格ではありません。
ただし——価格が妥当かどうかと、その支出が貴社にとって妥当かどうかは、別の問題です。ここからが、この記事でいちばん書きたかったところです。
使っていい場面は、3つに絞れる
手数料は、時間を買う対価と考えると判断しやすくなります。使う価値があるのは、次の3つの場面です。
- 空席が現場を壊し始めているとき。看護師が1名欠けた状態が続くと、失うのは売上だけではありません。残ったスタッフに負荷が寄り、疲弊が始まり、最悪の場合は連鎖離職につながります。採用が3ヶ月遅れることの損失——断った依頼、増えた残業、そして「次に辞める人」——を金額に置き換えてみて、手数料のほうが安いなら、それは合理的な出費です。この天秤を作らずに「とりあえず紹介会社に」と連絡するのは、値札を見ずに買い物をしているのと同じです。
- 立ち上げ期で、応募の母集団がゼロのとき。まだ誰にも知られていない事業所に、待っていても応募は来ません。認知が育つには時間がかかります。その時間を、最初の1〜2名分だけ買う。これは理にかなった使い方です。
- 希少な条件を探すとき。特定の専門性、特定の勤務形態。自力で出会える確率が極端に低い相手なら、出会いそのものに対価を払う意味があります。
共通するのは、どれも期間を区切ったスポット利用だということです。
妥当な価格でも、高い買い物になる場面
一番危険なのは、定着に課題を抱えたまま、紹介で補充し続けるパターンです。
辞める。紹介で埋める。また辞める。このループに入ると、採用費は毎年発生する固定費のようになります。そして先ほどの返金規定を思い出してください。半年を過ぎた離職に、返金はほぼありません。入職から8ヶ月で辞められた場合、100万円前後を払い切ったうえで、また次の100万円の相談をすることになります。
穴の空いたバケツに、1杯100万円の水を注ぎ続ける。手数料の価格が妥当かどうかとは無関係に、これは高い買い物です。
このループから抜ける方法は、紹介の使い方の工夫ではなく、組織の側を直すことしかありません。依存が自社の採用力を育てないという構造の話は、先の記事に譲ります。ひとつだけ、受ける側の実感を足すなら——紹介のご依頼をいただくとき、「この職場は、入った人が定着する状態か」は、受ける側から見るとだいたいわかります。わかっていて黙って紹介を続けるのは不誠実だと当社は考えているので、そういうときは紹介と一緒に、組織側の話をさせていただいています。
もうひとつ、高い買い物になりやすいのが、毎年コンスタントに採用が必要だとわかっているのに、その都度スポットの紹介で埋めているパターンです。恒常的なニーズは、そもそも成功報酬型で満たす場面ではありません。その場合は、求人媒体や自社求人の運用を低コストの月額で継続支援する「採用媒体運用支援」のような形に切り替えるほうが、コスト構造が合います。成功報酬は欠員の保険、月額運用は採用力の積み立て。性質の違うお金です。当社でも、紹介と並んでこの月額型のご支援を行っています。
中の人が教える、紹介会社の見極め方
せっかく中の人が書いているので、同業の見極め方も開示します。使うと決めたなら、良い紹介会社と組んでください。見るポイントは3つです。
- 入職後の定着の話をするかどうか。成約した方がその後どれくらい続いているか、定着のために何をしているかを語れる会社は、成約を「ゴール」ではなく「スタート」と捉えています。成約件数の実績だけを語る会社より、信頼できます。
- 現場を知っているかどうか。訪問看護と病棟では、求められる力も働き方もまるで違います。その違いを候補者に説明できているか。職場の実際を——良い面だけでなく大変な面も——伝えているか。ここが浅い紹介は、入職後のミスマッチ、つまり早期離職に直結します。
- 料率と返金規定を、最初から書面で明瞭に出すかどうか。当たり前のことですが、ここが曖昧な会社とは組まないほうがいい。あわせて、「他にも検討している法人があります」と決断を急かすことが多い会社にも注意が必要です。企業を焦らせる紹介は、だいたい候補者側にも同じことをしています。
明日、できること
直近1年間の採用にかかったお金を、一枚に書き出してみてください。紹介手数料・求人広告費・自社サイトや発信にかけた費用。この3つに分けるだけで構いません。
紹介手数料が毎年・複数名分発生しているなら、それはスポットの保険ではなく、構造になっています。見直すべきは紹介会社との付き合い方ではなく、辞めない組織づくりと、応募が来る前に知られている状態づくりのほうです。
逆に、紹介費が「あの緊急のとき1回きり」なら、それは正しい使い方です。妥当な場面で妥当な価格を払ったのですから、金額の大きさに引け目を感じる必要はありません。
当社は、人材紹介のご依頼と、低コストの月額で求人運用を支える採用媒体運用支援、そして「紹介に頼らない採用に変えていきたい」という組織づくりのご相談を受けています。どれが正解かは、貴社のいまの状態が決めます。その見立てからで構いませんので、お聞かせください。